基本
まずは大きな仕訳を頭に入れておこうと思います。
(Dr.) Pension expense
(Cr.) Pension asset / liability
(Dr.) Pension asset / liablity
(Cr.) Cash
そして、誰が何をするのかということを明確にする必要があります。
退職給付会計が嫌いになるポイント
・企業だけでなく、外部の金融機関が出てくるからややこしい点。
・Pension asset / liabilityがBS勘定でない点。
それでは、そんな嫌いなポイントに立ち向かって行きましょう。
外部の金融機関
外部の金融機関とは、保険会社や信託銀行などが当てはまります。
外部の金融機関は、制度資産の財政状態を表すstatements for net assets avilable for benefitsと制度資産の運用成績や拠出状況を示すstatements of changes in net assets available for benefitsの2つを作成しないといけません。
制度資産(Plan Assets)
外部の金融機関は企業からお金を預かり、株や国債や不動産などで資産運用する。その企業が預けたお金を制度資産(Plan Assets)といい、資産運用での運用益をreturn on plan assetsという。
給付債務(projected benefit obligation)
企業は積み立てと費用認識のみで、年金の支払い義務はなく、外部の金融機関が支払いの義務を負う。
この支払い義務(要するに負債)のことを予測給付債務(projected benefit obligation)という。通称PBO。
このPBOは勤務費用(service cost)と利息費用(interest cost)により増加する。
企業側
企業側は費用認識と積み立てを認識する。
勤務費用(Service cost)
将来もらえる年金額を従業員の平均残存勤務期間にわたって費用認識する。この時現在価値に割引くことを忘れずに!この費用のことを勤務費用(service cost)という。
利息費用(Interest cost)
利息(interest)とは名が付いているが、社債とか手形で出てきた利息ではないのでややこし。
期首(つまり前期末)の外部の金融機関が認識しているPBO(予測給付債務)に割引率を掛けたものを利息費用(interest cost)という。
まとめその①
外部の金融機関の制度資産(Plan Assets)は、企業が拠出した積み立て(contribution)と外部の金融機関が運用した運用益(return on plan assets)により増加をする。
運用益というのは費用の減少と同じ意味、つまり費用のマイナス。
外部の金融機関の予測給付債務(PBO)は、企業が認識する勤務費用(Service cost)を利息費用(Interest cost)により増加する。
制度資産(Plan Assets)が予測給付債務(PBO)よりも大きい場合はPension assetを認識し、その逆の場合はPension liabilityを認識する。
Plan Assets > PBO → Pension asset
PBO > Plan Assets → Pension liability
そしてややこしいのがPension asset / liabilityはBSの資産・負債項目ではなく、あくまでT勘定の項目なのである点。
年金費用とは勤務費用+利息費用-運用益です。
年金費用の構成要素
年金費用(Pension expense)を構成するものはいくつかあります。
勤務費用、利息費用、運用益、過去勤務費用の償却、利得及び損失です。
勤務費用と利息費用は先ほど出てきたので飛ばします。
運用益(return on plan assets)
運用益には実際運用収益と期待運用収益があります。
実際運用収益(actual return on plan assets)
株式や国債、不動産等への投資で運用された制度資産の資産運用益のこと。
求め方があるので暗記が必要。
期末の制度資産の公正価値(FV on Plan Assets at ending)
+)期中の給付金額(benefit payments)
ー)期中の制度資産積み立て金額(Contribution)
ー)期首(つまり前期末)の制度資産の公正価値(FV on Plan Assets at Beginning)
=)制度資産の実際運用益(actual return on plan assets)
期待運用収益(expected return on plan assets)
株式や債券などは不安定要素が強いので、制度資産に期待収益率を掛けて算出されるもの。USGAAPでは実際運用収益を期待運用収益に修正する会計処理を認めている。
資産利得及び損失
実際運用収益と期待運用収益の差額を、実際運用収益 > 期待運用収益であれば資産利得(Asset gains)、期待運用収益 < 実際運用収益であれば(Asset losses)としてOCIで処理をする。
Asset Gainが出る場合は、実際運用収益(3,000) > 期待運用収益(1,000)の時
(Dr.) Pension asset 3,000
(Cr.) Pension expense 3,000 → 運用益の増加、つまり費用のマイナス
(Dr.) Pension expense 2,000
(Cr.) Other Comprehensive Income 2,000
実際運用収益から期待運用収益を引いた値をOCIにAsset gainとして計上します。
逆に期待運用収益(3,000) > 実際運用収益(1,000)となった場合は
(Dr.) Pension asset 1,000
(Cr.) Pension expense 1,000 → 運用益の増加、つまり費用のマイナス
(Dr.) Other Comprehensive Income 2,000
(Cr.) Pension expense 2,000
実際運用収益から期待運用収益を引いた値をOCIにAsset lossとして計上します。
コリドールアプローチ
Asset gain and lossやLiability gain and lossは通常gainとlossがうまい具合に相殺されるが、まれにgainやlossのいずれかが大きくなりすぎることがあります。
その場合、gainもしくはlossが期首におけるPBOと制度資産の市場関連資産価格のいずれか大きい方の10%を超えた場合、超えた分は、従業員の平均残存勤務期間により費用処理(Pension expense)をしていく。
これをコリドールアプローチと言います。
過去勤務費用
過去勤務費用(Prior service cost)、いわゆるPSCです。
退職給付会計の改定などが行われた場合に、過去の労務提供に対して新しい算定方式を遡及して適用する。
その際、増加額をOCIで認識し、従業員の平均残存勤務期間によって償却(net incomeに振り替える)していきます。
過去勤務費用が発生した場合は、必ずcredit側にPension asset / liabilityの勘定をもってきて、debit側にはOCIをもってきます。
なぜかというと、過去勤務費用全額をPBOの増加としてする為です。
(Dr.) Other comprehensive income xxx
(Cr.) Pension asset / liability xxx → PBOの増加
(Dr.) Pension expense xxx
(Cr.) Other comprehensive income xxx
pension expenseを増やす要素です。
今日はこの辺で終わります。
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